流通経済大学
スポーツ健康科学部 大学院
スポーツ健康科学研究科 教授
小粥 智浩
Biography/略歴
浜松西高卒業後は横浜国立大学に進学し、同大学院 教育学研究科を修了。国際武道大学研究生、国立スポーツ科学センター医学研究部専任研究員(アスレティックトレーナー)を経て、現職の流通経済大学教授に赴任。2015~2021年までサッカー日本代表のコンディショニングコーチとしてFIFAワールドカップ・ロシア(2018年)、FIFA U-20 ワールドカップ・ポーランド(2019年)、FIFA U-17 ワールドカップ・ブラジル(2019年)などに帯同。
浜松西高サッカー部時代の思い出は?/2年生の時に赴任された池谷孝先生※の存在が大きかったですね。「サッカーに対して真摯に向き合う姿勢」を徹底的に叩き込まれました。時には理不尽に感じる指導もありましたが(苦笑)、結局、池谷先生の言葉ってどれもが“本質”を捉えているので納得せざるを得ないんです。サッカーに向き合うギアがひとつ上がりましたし、技術的なことはもちろんですが、メンタル的にもすごく刺激を受けたのを覚えています。
高校時代での一番の収穫は?/高校卒業後は、国立スポーツ科学センターのトレーナー、サッカー日本代表のコンディショニングコーチ、現在の流通経済大学教授など、数々の経験をさせていただいていますが、そのすべてにおいて私がモットーに掲げるのは、常に「本質は何か?」を考え、行動することです。これは間違いなく浜西サッカー部で鍛えられた影響だと思いますし、日頃から学生たちにも「言葉の裏側を考えよう」「文脈・行間を読んで行動しよう」と伝えています。“本質”というのは、表に現れるわかりやすい現象ではなく、見えない部分に隠れていることが多いですからね。
未来の県西部サッカーシーンに期待することは?/ひと昔前は“サッカー王国・静岡”と言っても、清水や藤枝といった県中部のことでしたが、ここ数年は、浜松開誠館や浜名が県内でチャンピオンになったり、伊藤洋輝選手(FCバイエルン・ミュンヘン)をはじめとする県西部出身のサッカー選手が世界で活躍することも珍しくありません。ぜひこれからも県西部が静岡のサッカーの中心となるよう、もっと言えば、日本のサッカーの中心として“サッカー王国・静岡”の再建をリードするような発展を続けていってほしいと思います。
最後にメッセージをお願いします/FIFAワールドカップ・ロシアの帯同をはじめ、トップレベルのサッカー選手と触れ合うことで「生き残っていく選手の特徴」がわかるようになりました。トップレベルの選手というのは、ピッチ内のことのみならず、ピッチ外においてもすごく真剣なんですよね。食事管理や練習前後のストレッチなど、当たり前のように自分のコンディションを整えるための行動を熱心にしていますし、サッカー以外のことに関してもすごく広い視点で分析しています。自分が成長するために、「サッカーを楽しむこと」に加え、もっと高みを目指すためにできることを全力で行う姿勢を持つことが大切で、特に、将来、プロサッカー選手を目指している若い世代の方には参考にしてもらいたいと思います。もう一点は、やはり、サポートしてくれる方々への感謝の気持ちです。この想いがあることが、選手の成長速度を加速させますし、周りから愛される選手としての大切な要素だと感じています。
(株)日立柏レイソル
ダイレクター
渡辺 光輝
Biography/略歴
浜松西高卒業後、早稲田大学に進学。関東大学リーグ優勝などの実績を残し、1997年に柏レイソルに加入。右サイドバックや右ウイングバックのレギュラーとして活躍し、ヤマザキナビスコカップ優勝に貢献した。2004年からはガンバ大阪に移籍し、J1リーグ優勝を経験。横浜FCへの移籍を経て、2006年シーズンに現役を引退した。引退後は早稲田大学大学院でスポーツマネジメントを学び、2008年より古巣・柏レイソルの事業運営に携わっている。
大切なことは「楽しむこと」、そして「あきらめない」こと
浜松西高サッカー部時代の思い出は?/浜西サッカー部は、私の人生の分岐点。本気で「プロを目指したい!」と思い描くようになったのが、まさにこの時期でした。恩師・池谷孝先生※と出会い、プロとして成功するための基礎を1から学びました。静岡県選抜での経験やブラジルへの海外遠征、国体優勝など、貴重な経験をたくさん積むことができたのも高校時代なので、浜西サッカー部や池谷先生には今でもすごく感謝していますし、この3年間がなければ、プロにいくことはなかったと思います。もっと言えば、サッカーを続けていなかったかも知れませんね。
高校時代での一番の収穫は?/ひとつ挙げるなら、県選抜の一員としての経験です。当時の静岡県選抜には年代別の日本代表選手がゴロゴロいて、すごくレベルが高かったんです。正直、ついていくのがやっとでしたが、そういう中でプレーできたのはすごく大きかったと思います。加えて、海外のチームとの対戦にもすごく刺激を受けました。育ってきた環境、文化、価値観など、日本の常識が全く通用しない相手と対峙することで、恐怖に似た気迫のようなものを感じました。日本でもよく「向上心を持ってプレーしろ」と言われますが、海外の選手を見ていると、その言葉の意味がイヤでも伝わってくるんですよね。
未来の県西部サッカーシーンに期待することは?/県西部のユース年代のチームを見ていると、全国の強豪チームとも互角に渡り合えたり、プロに進める実力を持った選手たちが続々と出始めていますよね。私たちの時代では考えられなかったことなので、素直にうれしく思います。芝生のグラウンドなど、サッカーをする環境もどんどん整備されていると聞いていますので、今後ますます楽しみです。県西部のレベルが上がることで、中東部勢も躍起になってくると思うので、そうやって静岡県全体で良い競争力を生み出していくことで、さらなる静岡サッカーの進化につなげていってほしいと願っています。
最後にメッセージをお願いします/私の経験則から言うと、サッカーをする上で大切なことは「楽しむこと」、そして「あきらめない」ことです。特に、幼少期から小学生くらいまでのサッカー少年・少女たちには、ぜひこの2つを意識してほしいですし、親御さんや教育者の方たちには、これらの意識付けに必要となる環境や経験をひとつでも多く提供できるようなサポートをしていただけたらと思います。サッカーも人生も同じですが、思い通りにいかない事態というのはどうしてもやってきます。努力だけではどうにもならないこと、周囲の助けが必要なこと、運やタイミングが大きく影響することだってあるでしょう。そういった場面に直面した時にも、まずはその状況を「楽しむ」こと、そして、状況を自分なりに受け入れて「あきらめない」気持ちで続けていくことが大切です。仮にその時は目標に達成しなくても、得られるものがたくさんあります。サッカーを通じて人間性を鍛え上げ、たくましく成長していく子どもたちに期待しています。
浜松開誠館中学校・高等学校
サッカー部コーチ(JFA公認A級コーチ)
岡本 淳一
Biography/略歴
浜松西高卒業後にプロの世界に進み、東京ガス(現 FC東京)や大塚製薬(現 徳島ヴォルティス)などでプレー。選手引退後はFC東京の下部組織で指導者としての経験を積み、2006年より浜松開誠館中学校・高等学校のサッカー部コーチに就任。青嶋文明監督とともに、浜松開誠館を県内屈指の強豪校に育て上げ、7年連続全中出場(2度の優勝)、2度の選手権出場などに導いている。
浜松西高サッカー部時代の思い出は?/絶対にプロサッカー選手になる!幼い頃から思い描いた夢の架け橋となったのが、浜西サッカー部での3年間でした。真っ先に言えるのは、池谷孝先生※という素晴らしい指導者に出会えたこと。私自身も現在、サッカー部のコーチとして中高生の指導にあたっていますので、その礎も西高サッカー部での経験にあると考えています。
高校時代での一番の収穫は?/池谷先生の厳しくも愛情溢れるご指導もそうだし、共に切磋琢磨した仲間たちとの出会い、全国まであと一歩(高校総体の県予選で準優勝)のところまで勝ち進めたこと、静岡県代表として広島国体で優勝できたこと…など、どれも外すことのできない収穫です。もうひとつ「世界を知る機会に恵まれた」というのも大きかったですね。西高サッカー部での海外遠征(オランダ遠征)、アンダー世代の日本代表候補に選ばれた時のフィジーやニュージーランド遠征など、高校生という多感な時期に、普段なかなか体験できない環境の中でサッカーに向き合うことができたのは貴重な体験でした。
未来の県西部サッカーシーンに期待することは?/手前味噌になりますが、近年では、私がコーチを務める浜松開誠館が全中で優勝したり、2度の選手権出場を果たすなど、県西部勢の活躍(特にユース年代)が注目されるようになりました。他にも、西高の後輩である内藤監督率いる浜名高校をはじめ、若手の指導者が、様々なカテゴリーで県西部のサッカーの底上げに尽力しています。このベースとなっているのは、何十年も前から粛々と種を撒いてくださった諸先輩方、幼稚園や小学生にサッカーの楽しさをしっかり教えてくださった指導者の方々、そして、父兄の方々のおかげです。私自身も常に「年齢を重ねてもずっとプレーを続けられる、確かなボール技術とサッカー感」を心掛けています。そうすることで、大人になってからもプレーできたり、子どもにサッカーを教えてあげられたり…と、一生涯、プレーヤーとしてサッカーに関わる生活を楽しめると思うのです。
最後にメッセージをお願いします/今年8月、浜松開誠館サッカー部の青嶋文明監督などが中心となって「コネクティングコミュニティ杯」という新しいサッカー大会を立ち上げました。前回の選手権覇者・岡山学芸館さんをはじめ、全国屈指の強豪校が県西部に集い、全国大会さながらのの熱戦が繰り広げられました。県西部にこれだけのチームが集まっていただけたのは、ただただ「スゴい!」の一言ですし、県西部のサッカー文化にとってもすごく良い影響を与えられたと思います。このように、今、県西部地区のサッカー熱は上昇傾向にあります。「サッカーなんて興味ないなぁ」という方でも、この記事をきっかけに、地域にサッカー文化を根付かせる力となっていただけると幸いです。一緒に盛り上げていきましょう!